サルコイドーシス

サルコイドーシスとは

リンパ節や眼、肺、心臓、肝臓、皮膚、筋肉、神経系などの臓器に、肉芽腫と呼ばれる小さな結節が形成される全身性の病気をいいます。原因は不明です.病変個所で多いのは、肺、胸の中のリンパ節、眼で、健康診断の胸部X線検査で自覚症状のないまま発見されたり、眼の異常がきっかけで見つかることが多くみられます。好発年令は、20才代の男女と、40~50代の女性です。また、発生率、臨床像で著しい人種差、地域差があり、日本では、肺の病変に関しては呼吸不全にまでなることは少なく、予後は比較的良好な疾患です。特定疾患に指定されており、医療費が公費負担されることがあります。

症状

胸部X線写真で影があっても殆どの場合無症状ですが、咳や息切れを呈することもあります。眼の場合は、ぶどう膜炎や網膜などに病変が現れることが多く、視力低下や、飛蚊症などの症状を呈します。頚、脇の下、鼠径部のリンパ節の無痛性の腫れ、発疹などの皮膚症状、発熱、倦怠感などの全身症で発見されることもあります。

主な検査所見

1.画像所見(胸部X線・CT所見)

大部分の症例では、両側肺門リンパ節腫大、縦隔リンパ節腫大を認め、本疾患を疑う大きな根拠となります。肺には、陰影を伴っていることもあれば無いこともあり、肺野の陰影は極めて多彩です。画像所見で、リンパ節の腫大や肺に影が認められるにもかかわらず、自覚症状に乏しいことが本疾患の特徴です。

2.血液検査

  • 血清アンギオテンシン変換酵素(ACE);約7割の患者さんで血液中のアンギオテンシン変換酵素(ACE)の上昇を認めます。通常は、肺の血管内皮細胞で産生される酵素ですが、この疾患では、病変部からも産生、遊離され、ACEの値が上昇します。
  • 高カルシウム血症;病変部からビタミンDが産生され、高カルシウム血症を呈したり尿中へのカルシウムの排泄が増えることがあります。高カルシウム血症が続くと、腎臓機能の低下を起こしたり、腎結石が出現したりすることがあります。日本では、比較的少ない所見です。

3.ガリウム(67Ga)シンチ

67Gaというアイソトープを注射すると、病変部位に67Gaの取り込みが認められ、病変の存在部位や病気の活動性を調べるのに役立ちます。

4.ツベルクリン反応

以前陽性だったツベルクリン反応が陰性化することがあります。

5.気管支肺胞洗浄所見

気管支鏡で肺の一部分を洗う検査で、洗った液を調べると多くの症例で、細胞数の増加や、リンパ球数の増加を認めます。このような所見を認めると本疾患を疑う大きな根拠となります。

診断

胸部X線所見に加え、生検(病変の一部分をとり、顕微鏡で調べる検査)にて肉芽腫が証明できれば診断は確実となります。生検は、病変が存在している部位か ら行い、まずは検査が簡便な部位から行います。腫れたリンパ節が触れるところがあったり、皮膚病変があればそこから行います。気管支鏡検査で、肺の生検を 行い肉芽腫病変を証明することもよく行われます。肉芽腫病変が証明できなくとも、画像所見、血液検査、気管支肺胞洗浄所見、目の病変の有無などから、総合 的に診断されることもあります。

予後・治療

過半数の患者さんは、数年以内に自然に良くなりますが、経過中に、肺に新たな影が出現したり、肺以外の部位(眼、皮膚、心臓、筋肉、神経系など)にも新た に病変が出現することがあり、一部の患者さんで重症化することがあるので要注意です。通常は、特に薬を内服せず経過をみますが、胸部X線写真で影が拡がっ たり、息切れ、持続性の咳が認められる場合や、視力低下をおこしたり、美容上問題となる発疹、高カルシウム血症、心臓、神経系に病変が現れた時などは、副 腎皮質ステロイド薬で治療を行います。

参考文献
1. 特発性間質性肺炎とその周辺疾患;編集/間質性肺疾患研究会
2. 内科学;朝倉書店
など

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